”Design”という言葉、そして行為は、デザイン業界以外の方にとって、特殊な才能を持つものだけが行う特別な響きを持っているように思えることが私にはたびたびあります。もちろん先人達の偉大なる仕事がこういったイメージを生み出してしまったことも有るのでしょう。しかし、私が考える”Design”と言う言葉はもっともっと身近にある私たちが当たり前に持っている考え方、そういうもので有って欲しいと願っています。
ところで「デザイン」と「デコレーション」を同じような意味でとらえている方は案外、多いのではないでしょうか?もちろん「デザイン」という言葉にはそういう一面もあります。人の心理として「美しいと感じるものがより良いものだ」と感じる傾向があるので、デザイナーの仕事というのは基本的に「デコレーション」に近い作業がメインになってはくるのですが、どうも私としては「デザイン イコール デコレーション」と思われることに違和感を感じてしまうのです。
「デザイン」という言葉は実際よく使われる言葉だけに、意味が曖昧のまま使ってしまいがちですが、まず「Design」を辞書で調べてみましょう。すると大抵の場合は「設計」という意味で使われると言うことが書かれています。個人的には、この「設計」の方がデザインの訳語としてシックリと感じます。
ちなみに商業デザイナーという職業は「顧客の売上に貢献する」という点で存在意義を持つと私は考えておりますが、それはすなわち私は日々「どうしたら、この商品やサービスが売れるようになるのか?」と言うことを考えているということです。
その考え方というのは「あるガイドライン」に沿って消費者の気持ちを「対価を支払う」という行動に向かって誘導するためにはどういう仕組みが必要なのか?と考える。つまり『仕組みを設計する』ということだと思っています。ちょうど建築家が「快適に感じる」というゴールに向かって、使いやすいキッチンや部屋のレイアウトを設計するようなイメージです。きちんと設計された家の中はみんなの動きがスムーズになりますよね?この目的(ゴール)に向かって「スムーズに動く」というのがデザインするうえで一番大切なことだと私は思います。
まとめさせて頂くと、私たち商業デザイナーは、消費者がスムーズに欲しいと思う商品を見つけ出し、あるいはたくさんの商品の中からその商品を欲しいと思ってもらえるよう、そして商品を購入あるいはサービスを受けるよう消費者の気持ちをスムーズに誘導する仕組みを設計している、それが私の仕事だと思っています。